Publish:2025.12.22
Category:ニュースリリース屋久島おおぞら

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AI翻訳や自動通訳の精度が向上し、言語の壁は以前よりも低くなりつつあります。
スマートフォン一つで会話が成立する今、語学を学ぶ意味はどこにあるのでしょうか。
AI翻訳が当たり前の時代でも、高校生は語学を「人と向き合う力」と捉えています。
学校法人KTC学園では、留学を経験した高校生459名を対象に、「AI時代に語学を学ぶ意味」や「言葉との向き合い方」をテーマとしたアンケートを実施しました。
本コラムでは、複数の質問項目や生徒の声をもとに、調査結果の背景を読み解いていきます。
アンケートでは、留学前の心境についても質問しました。
多くの生徒が、英語が通じるかどうか、間違えたらどう思われるか、自分の言葉で話せる自信があるかといった点に、不安を感じていたと回答しています。
語学力そのもの以上に、「話すこと」そのものに対する心理的なハードルが大きかったことが分かります。

問い:翻訳アプリやAI通訳を使ったことがありますか?
留学中の行動についての設問では、翻訳アプリやAI通訳を活用した経験がある生徒が多数を占めました。
翻訳ツールは、困ったときの助けとして広く使われています。
一方で、翻訳を介した会話と自分の言葉で直接話す会話を比べたときの印象について尋ねると、「便利だが距離を感じる」「会話が続きにくい」といった声が多く見られました。
この結果から、少なくとも今回の調査に参加した高校生にとって、AI翻訳は「特別なもの」ではなく、すでに身近なツールであることが分かります。
「言葉が通じること」と「心が通じること」の違いについての設問では、多くの生徒が「違うと思う」と回答しています。

問い:「言葉が通じる」と「心が通じる」は違うと思いますか?
生徒たちは、言葉を情報のやり取りとしてではなく、相手との関係を築くためのものとして捉えているようです。
翻訳ツールを使えば会話は成立する一方で、相手の表情や間の取り方、感情のニュアンスまでは伝わりきらないと感じた生徒も少なくありません。
「翻訳ツールを使うか、自分の言葉で話すか」を選ぶ場面についての質問では、たどたどしくても自分の言葉で話したいと感じた生徒が多数派でした。
自由記述には、「自分で話した方が相手の反応が分かった」「間違えても聞こうとしてくれたのがうれしかった」「翻訳ツールだと会話している感じがしなかった」といった声が寄せられています。
ここからは、正確さよりも「やり取りしている実感」を重視する姿勢が見えてきます。
留学を通して、生徒たちは「言葉」そのものへの向き合い方が変わったと語っています。
完璧に話せなくてもいいこと、間違えながらでも伝えようとする姿勢の大切さ、そして、言葉の奥にある気持ちや背景に目を向けるようになったこと。
こうした変化は、「話せるかどうか」ではなく「どう伝え、どう関わろうとするか」という視点へと、生徒たちの意識を広げていきました。
では、AIがすべてを翻訳してくれる時代において、生徒たちは「語学を学ぶこと」そのものを、どのように捉えているのでしょうか。

問い:AIがすべて翻訳してくれる時代に、語学を学ぶ意味はあると思いますか?
アンケートの結果、80.4%の生徒が「語学を学ぶ意味はある」と回答しました。
翻訳ツールが当たり前に使える環境にあっても、多くの高校生は、語学の価値が失われたとは考えていないことが分かります。
この結果は、「語学=翻訳の代替手段」ではなく、人と関係を築くための学びとして捉えられていることを示しています。
実際、生徒からは、
• 翻訳ツールがあっても、自分の言葉で話そうとする姿勢が大事だと感じた
• 言葉を学ぶことで、相手の文化や考え方を理解しやすくなった
• うまく話せなくても、伝えようとすることで距離が縮まった
といった声も聞かれました。
AI翻訳は、確かに心強いツールです。
しかしそれは、「話さなくてよくなる」ためのものではなく、「人と向き合うことを助けてくれる補助的な存在」として受け止められているようです。
留学を経験した生徒たちは、AIを否定するのではなく、AIを前提としたうえで、それでもなお「自分の言葉で学び、伝えること」に意味を見出しています。
この結果は、AI時代における語学学習が、単なるスキル習得ではなく、人と関係を築くための姿勢や考え方を育てる学びであることを示していると言えるでしょう。
・調査テーマ:AI時代に語学を学ぶ意味・言葉との向き合い方
・調査対象:留学経験のある高校生
・回答数:459名
・調査方法:Webアンケート
・調査時期:2025年
留学や海外体験を含むグローバル教育の取り組みについては、おおぞら高校のグローバル教育紹介ページで詳しく紹介しています。